『小説 ドラゴンクエスト』

[小説の話]2006年05月20日

 著・高屋敷英夫、絵・いのまたむつみ。1989年、エニックス(現・スクウェア・エニックス)刊行。かつて一大ブームを巻き起こした事もあるファミコン・ゲーム『DRAGON QUEST』シリーズ第一作目の物語が小説化されたもの。

 

 冗談抜きで『ドラゴンクエスト』というタイトルのシリーズに私が最初に触れたのはこの小説版、1989年に刊行されたハードカバー版だった。ファミリーコンピューターの本体がまず、無かったし、それでもタイトルだけは耳に入ってくるような頃、何かの切っ掛けで(何だったか忘れた……)小説版の存在を知って、ほとんどそのまま市立図書館に駆け込んだ。
 私にとっては小学校の図書室と図書館の児童用コーナーだけだった本の選択範囲を、それ以外のコーナーに足を向ける切っ掛けを作ってくれた本でもあった。────かつて『ダンジョンズ&ドラゴンズ』というテーブルトークRPGの設定を元にして書かれて、どっちかといったらマニア向けに出版されていた『ドラゴンランス』シリーズ(マーガレット・ワイス他著/富士見書房)が、ちょうど映画『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリーポッター』シリーズのブームに乗っかったような頃合いにアスキー社から児童文学書として書店に並んでいた今では少し不思議な気分だけれど、だいたいゲーム・ノベライズものは、少なくとも私の住んでいた市立図書館では『日本文学』に分類されて並んでいた。────

 それほど癖は強くはない文章、だと思う。異世界物の常として最初は知らない単語の連発だけれども、読み進めていくうちに徐々に本文中、要所要所で地文や情景描写と織り交ぜて解説されているから、最初は深く考える必要はない。少しばかり漫画調の擬音等の直接文字化が多めなくらいか。
 たぶんゲーム・ノベライズの宿命として、その情景描写や物語そのものに小説を書いている人物の独自設定が入る。当たり前と言えば当たり前な話、表現形態が違うのだから、必要な要件設定も違うし、物語を進めていく手法として「全てが同じ」でいいわけがない……と、私は思うんだが……原本となるものと少しでも違うと許せない、という人も居るらしいから、まぁそこら辺は人それぞれなんだろう。
 物語の概要は至極オーソドックスで「かつて世界を救ったという伝説の勇者ロトの子孫であると名指された少年が、世界を支配しようと目論む竜王と名乗る魔王を倒す話」だ。ついでに「救った世界の王様の娘であるお姫様と勇者が最後には結婚する」という思いっきりお約束な話もついている。
 私が同作の原作にあたるゲームを実際にやったのはスーパーファミコン版で、話に聞くところ、画面を始めかなり色々な要素が変わっていたらしいから、本当の原作というのは知らないのだが、それでも小説版と原作ゲームとでは根本的に違う所は多々ある。特にファミコン時代は未だ未だソフト自体に入れる事の出来る情報量が少なかったから(写真のJPEG画像一枚分よりも少ないそうだ)、今現在のRPGよりも遙かに表現力が低かった。
 それに、ゲームではあまり厳密だと困るが、小説では逆にそれがないと締まりが無くなる話や設定、説明不足が気になること、というのもある。
 『小説ドラゴンクエスト』では王女ローラの設定に手が加えられている。また勇者と名指されてもやはり旅慣れない16才の少年アレフに、ゲームでも名前だけは出るガライという名の、かつての『勇者ロトの時代』の吟遊詩人が伝説側の、そして高屋敷英夫氏世界独自にガルチラという名の戦士が実質の旅人の先輩として、それぞれに導き手の役割を果たしている。賛否はあるだろうけれど、私はこれらの改編は小説には必要なことであり、またゲームでは不必要なことである、と思う(ゲームをやったときに必死にフィールド上にガルチラを探したことは否定しないけれど(^^;)。
 敵軍、竜王軍側の確執や焦りを見る事ができるのも、ゲームでは主人公の視点でしか語られることのなかった世界の側面だ。
 なかでも高屋敷英夫版ドラゴンクエストの中で、特筆すべきはガルチラの周辺の物語、そして、その系譜が『銀の横笛』というアイテムを鍵として後の『小説ドラゴンクエスト2』『小説ドラゴンクエスト3』に関わっていくことだと思う。

 ちなみに現在では同タイトル・内容がほぼ変わらない物が三種類存在する。
最初1989年に出版されたハードカバー全1巻のもの。

1991年に出版された文庫版全2巻のもの。こちらはハードカバー版から加筆・修正がされている(…と、書いてある…付き合わせてみた事がないのでさすがに細かくは判らない。それくらいの修正、なんだと思う。)。ついでに文庫版とハードカバー版では表紙を始め、イラストが少し違う。さらに文庫版下巻の最後にはイラストのいのまたむつみさんによる「キャラクター・イラスト設定」が収録されているので、いのまたむつみファンにとっては文庫版の方が断然お得かもしれない。(現在、私が所持しているのは文庫版の方)

 この2種類は現在、一般市販ルートでは流通していない(出版年を見れば漠然と判るとは思うけれど)。ただ、少なくとも私の身の回りでは新古書店等にあることが多い、特にハードカバー版────もしかしたら私みたいに、文庫版の方が絵が多い、加筆修正等々の理由で買い換えてハードカバー版を叩き売った人が何人も居るんじゃなかろうか、と勘ぐってみる。ただの想像。真相は知らない。

現在、2000年に出版された物がまだ通常ルートで流通されている。このヴァージョンは私自身は手にとって見た事がないのでAmazon等の情報以上のことは判らない。


 Amazonのアソシエイト・プログラムに登録、リンクを張ってみました。一応、ここからのリンク先で誰かがこの本を買って頂くと私にちょこっとだけの金額が還元されるようです……が。別にもうけようと思ってやってるわけではありません(…っていうか、そもそも古本の方がどうこうなった場合の還元は無いんじゃないか、って気もするし。でも今後もこういう形で紹介やその本を出汁にして何か書くものの大半はたぶん、古本さえ流通しているかどうか……だし(^^;)。ただ比較的正確な情報源としてのリンク先ついでに、という感じです。悪しからず。


※5月23日追記
 すかさんがBlog『日々是丹精』内5月22日付け記事『[読書]懐かしい話をしよう。』でこの記事との関連で批判・補足にまるっとひとつ記事をさいて触れてくれました。思いっきり『高屋敷英夫版ドラゴンクエスト』シリーズをこき下ろしています。万一にもこの記事を読んで「読んでみようかな〜」なんて思っちゃった方は是非先方の記事も併せてご参照を。そしてどちらの主張に共感するかは読んだ人自身の主観に寄るのだと思う。(ただ、ここでは2、3についてはあまり触れていない…いずれ分割して書きたいと思っているから。)
 敢えてこうして言及することもないだろうし先方も判っていて、かつ私がこういうのを喜ぶと思ってやってくれている(実際よろこんでるし)と思うからこそ、敢えて。私のサイト上その他での発言は全て私の主観に基づいている。私以外の人間に私はなったことが無い。
 あと『ドラゴンクエスト』シリーズに限定すると、冒頭でも書いている通り、ます「小説版」、さらに「→サイドストーリー本→DQ4コマ劇場(エニックス出版・全巻ではない)→漫画版(『ロトの紋章』(藤原カムイ/エニックス)『ダイの大冒険』(原作・三条陸/画・稲田浩司/集英社)→何年かしてSFC版ゲーム」という、他に同じ順番を辿った人が居たら見てみたい、ってな心境のシロモノなので、ゲームをやったころにはすっかり別作品との連動フィルターがかかっていた可能性が大きい、いや、たぶん間違いない。ついでにこの小説について誰かと延々と語り合ったという記憶もない。というわけで、すかさんの評価の方が公評的には正解かもしれない……一応、付記しておきます。
 ……でも私は自分主観による紹介文のふりした感想文を辞めることはないし、本文を改編もしない。これはあくまでも龍魔幻個人が5月20日時点で持っていた(あまり多くない、てか少ない)情報と主観に基づくものであることに違いはない。


■コメント
投稿者: TORO

うち姉が好きで「5」までハードカバー、全部ありました(^-^)。だから文庫版の方はほとんど知りません・・。オトクだったのか・・。
私は高屋敷さんの方が好きだったんだけど
4の久美さんもアリーナの「僕」除けば(笑)好きだったなぁ・・。
ところで りゅーさんの言ってるタイトル(ダンジョンズ・・・)大体わかるよ♪共通してて嬉しいです。
読んだけどほとんど内容忘れちゃいました( ;^^)ヘ..。
私もその当時ゲーム系のファンタジー好きやったなぁ・・と懐かしく思われ・・・。

2006年05月21日 11:34
投稿者: TORO

あ まちがえた。DQ6まであったわ・・。
テリー×バーバラ がイイ雰囲気なのが良かった!

7は読んでないけど 立ち読みした感触としては、なんかアイラ×主人公だったのかな?そんな印象が・・。意外なカップリングでちょっとオドロキ・・・。
 

2006年05月21日 11:36
投稿者: 龍魔幻

 DQ1〜5(ルビス伝説含む)はハードカバー版買っていて、後で文庫版揃え直してハードカバー版売り払い…6は文庫版のみ…全て小説が先だったので違和感ゼロでした(^^; (っていうか6は現在に至るまでゲームやったこと無い…(汗))
 小説6の最後の〆方は私も好きですv
 DQ7は…作家さんが変わったからか、別の要因か、なんとなく、読んでません、現状。

>『ダンジョンズ&ドラゴンズ』
D&D自体は映画になってた……ような……(曖昧
実は『ドラゴンランス』は古本文庫セットで買った物が6冊ほど棚にはあるのですが……前に開いた時は邦訳が気に入らなくて、積ん読(読んでない…ぁわわ

2006年05月21日 16:48
投稿者: TORO

D&D自体は映画になってた>>
みたみた〜(^o^)!勇者役の方がなんか情けない感じの俳優さん?(笑)
あ、ファンに見られたら怒られるか(笑)!
ところでエルフ女性役ってハル・ベリーに似てない?って思ったの私だけ?

積ん読>>
なるほど!ウマい言い方!(^-^)
いや私も図書館で張り切って借りてきてコレやること多々あります・・・(苦笑
おおかたの人がやっておられると信じたい(笑)!!

2006年05月22日 14:17
投稿者: 龍魔幻

 TOROさんは映画、けっこう見てらっしゃるんですね…私が見て無さ過ぎるだけかな。『D&D』についても、偶然タイトルと存在を知った、ってレベルなのです……ゴメン。何かの番組で映画の裏側、みたいなのを特集してたので知ったんだと思います……「全て本物で」と罠とかを全部CGとかではなく本物でやった、ってのにド肝を抜かれた記憶が…(TRPGとしてのD&Dは割と過酷な罠で有名、らしい、これも伝聞(汗))

>積ん読
これもどっかからの受け売りです〜私も、「上手いこというなぁ」と思って(^^; 図書館ならいいですよ、返せば終わる、買っておいてやった日には……

2006年05月23日 11:19
投稿者: TORO

私は少なくとも伝聞、まったくOKなんでご安心を!(^_^)
だってだいたい
伝聞なかったら世の中大変な事になるし・・。
(本当に正しいかどうかは自己責任で判断すればいいんだもんね!)
だけど こだわる人もいるみたいですね。
たまにネットで見かける不毛なケンカ(笑)。

2006年05月23日 14:29
投稿者: すか

ども。
「ドラゴンランス」は映画化するって話があったような。ポシャったのかなあ。
ハードカバー版になって第1部だけやっと読破しました。図版が収録されてるのがいいなあ。

映画版D&Dは盗賊ギルドの試練のシーンがおもしろいな。ダンジョンに挑戦するのを見世物(賭けの対象にする)ってのはちょっと新鮮だった。

2006年05月23日 19:04
投稿者: 龍魔幻

>TOROさん
>ネットで見かける不毛なケンカ(笑)。
第三者として眺めているには面白い事もありますが…っていうか「パワフルだなぁ、双方」って感心します(苦笑

感想とか評価とか、みんなが全く一緒だったらむしろ気持ち悪いと私は思いますし。

>すかさん
ぁぅ、映画は基本、大半ろくずっぽうノーチェック。そんな話もあったんですぁ。
……映画『D&D』…そのうち見てみようかな……「そのうち」がどんどん増えている気がする今日この頃…(汗

2006年05月23日 20:08

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