『空と水底』

毎月300字小説企画 テーマ:憧れ/2024.04.06.

川にはきらきらと光る小石があった。
夜空にはきらきらと光る星があった。
星は空から、いつも小石の輝きを見ていた。流れる水を浴びて、小魚たちが群れるさまは賑やかで、楽しそうに輝いているのを羨んだ。
小石は川の中から、夜になるたびに空の星を見上げていた。輝く星は神秘的で、暗闇にきらめいている姿は孤高の凜々しさを放っているようで、自分がああなれたら、と、思いながら、見上げていた。

星は知らない。水底で転がる小石の、流される不安を。やがて大海に沈んで揉まれるかもしれない恐怖を。
小石は知らない。空は極寒で、無にも等しい空間にぽつりと投げ出されることを。

小石も星も、替われることなく、憧れながら、互いに輝き続ける。

2024年03月02日 『毎月300字小説企画』

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