『祈りは届く』

　女は、強く育てと言い聞かせながら種をまく。
　男は、大地に念じながら苗を植える。
　雨乞いの老女はいつにも増して空の機嫌を伺う。
　教会では祈祷にいつもの倍は人が来た。
　占星術師は夜空に善き日を読み取ろうと注力した。

　祈りが渦巻いた年、いつにも増して、豊作になった。
　かの占い師は、偽物、嘘つき、と、住処を追われた。

　翌年。
　女は種をまく。男は苗を植える。
　雨乞いの老女は疲れで寝込み、教会は閑散とした。
　占星術師の星読みは、戦や色恋の沙汰が多くなった。

　その年、凶作だった。
　大地の荒れが目立ち、人の心が荒れた。

　追われた占い師の呪いだと、誰かがいう。
　許しを請う祈りを、誰かが口にした。